輪舞曲-黒と白のcaprice-
「殺るのなら今よ。もうこんなチャンスないかもよ…?」
敵討ちが出来ないのは悔やまれるけど、このまま姉さんのところへいけるなら本望だ。
汚し過ぎた手。会えるとは思えないけれど。
その思いひとつのみで、それだけ告げて、再度強く瞳を閉じる。ぽろっと溢れた何かは見ないふり。
『………ああ、そうだね。今の君なら簡単に仕留められそうだね。けど…』
「…?」
言い淀み。生ぬるい風が間を引き裂くように吹き付け、言葉さえも奪ってゆく。
だが、きっぱりとした迷いなどない口調でアサギは言い放つ。
『言ったでしょ、ユリア。今君に死なれるわけにはいかないって。
だから、何があっても決して死なせはしない。
第一君はどうしてこう…死にたがりなの?もう少し生に執着しなよ。諦めが早いんじゃない?
ったく。発破をかければいいかと思ったのに…逆に真に受けないでよ』
予想だにしなかった浅葱の解答に目を丸め、再度奴の表情を見る。
暗闇の為か、奴の感情が読み取れない。
『だからユリアを助けてあげる。そのためにもう少し頑張れる?此処より安全な場所に連れて行ってあげるから。』
「何でそこまで…」
『何回も同じ事を言わせないで。俺は俺の目的の為に君が必要なの。それでも死にたがるんなら全てが終わった後に、この手で葬ってあげるから』
その言葉を聞きながら、“馬鹿言わないでよ”と呟きあたしは静かに意識を手放した。