輪舞曲-黒と白のcaprice-
Episode2 黒衣の狩人



夜の闇を切り裂く、血の歓声。
消えることのない血臭を、まるでコロンのように身に纏わせて今宵もまた彼は夜を引き連れ闇を支配する。
そう、まさに、その姿はー…


un cride joie sang.




「ったく、結局ここに逆戻りじゃんか」

小春日和の日差しがやけに鬱陶しく、けれどもれなく万人にもれなく差し伸べられる穏やかな春の日に、抜け出した筈の無法地帯の何物でもないこの非常識極まりない病院に舞い戻っていたあたし。
今回もどう戻ってきたか全く記憶にないものの、奴に尋ねるのもなんだか癪に触るし腑に落ちないそんな気がして未だに聞けずじまいだ。今回も醜態だけは晒していないことだけ願っている。
そして今度こそ抜け出そうにも頭には包帯、両手両足には固定されたギプスが邪魔で動きさえままならない状況下にあるあたしとは引き換えに、優雅に空中浮遊を嗜む黒衣のあいつに苦言を一つ落とす。
けれども、そんな事などお構いなしであると体現するかの如くこれもまた貴族宜しくと云わんばかりの優雅な笑みを浮かべてはあたしの神経をひとつ、またひとつと逆撫でる。
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