輪舞曲-黒と白のcaprice-
Episode1 邂逅
ゆらりふらり、何か暖かいものに包まれているような浮遊感。
心地良く何時までも微睡んでいたい、そう固く瞳を閉じる。
「起きて。まだ眠りにつくときじゃない。
生きて。彼女のために」
眠りを妨げる甲高い声に嫌悪感を覚え、閉じていた瞳をゆっくり開ける。
そこは見覚えもない場所に違和感を与える自身の存在。
『…? 身体が軽い…?』
そこはただ“白”という印象しか与えない。
家具も壁も生活小物も何もかも白で統一されていた。辛うじてテーブルの上に、食事後の形跡のあるトレーにグラスと救急箱が広げられており、生活感は残されていたが何もかもが新品同様であった。
そんな空虚さを否めない場所に何故自分がいるのかが至極解明出来ない。
確か…、俺は相手を…少女だからと甘くみていた。加減するために手を弛めた結果逆にしてやられ、致命傷を喰らい確実に頭蓋を撃ち抜かれた。
俺は…絶命したはずだった。
けれど眼前には、数時間前に俺を撃ち抜いた張本人が白い包帯を巻きながら目を見開いて此方を呆然と見ていた。
「…驚いたわ。仕留めたという手応えはあったけど…。まさか生きてたなんて」