桜の木の下で
ふと風が吹いた。
気持ちいい~。
目を閉じて立ち止まっていると、

ドンっ。

誰かがぶつかった。
ヒールを履いていた私は前のめりになった。
たっ、倒れる!!
あっ!!

……?
……あれっ?
……私、痛くないよ。

一瞬、何が起こっているのかわからなかった。

えっ、私、腕を掴まれて倒れなかったんだ。

「大丈夫ですか?」
「えっ、あっ、はい。大丈夫です」

私は恥ずかしくて俯きながら答えた。

「すっ、すいません。私が話に夢中になってたから」

声からして、可愛い人なのだと想像できた。

「私のほうこそ、立ち止まっていてすいませんでした」

頭を下げ、顔を上げだ。

「かっ、菅田さん?」
「あっ、おまえかぁ」

明らかにさっきと声のトーンが違う。

「稜の知り合い?」
「知り合いってほどじゃないけど……」

嫌な顔をしてる菅田さん。

やっぱり迷惑なんだ。
< 25 / 142 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop