桜の木の下で
「どうかしましたか?」

ボーッとしている私とは違い、
坂下さんはすぐ菅田さんに話しかけた。

「先程の会議でここにスマホを
忘れたみたいなのですが…………」

あっ、あのスマホ菅田さんのだったのか。

「このスマホですか?」

私は、スマホを置いた場所に向かった。

菅田さんもあとについてくる。

私は手にスマホを取り、菅田さんに見せた。

「これです。ありがとうございました」

他人行儀な菅田さん。
きっと私と知り合いと思われたくないのだろう。
悲しくなった。
でも、仕方ない。
私のこと何とも思ってないのだから…………。
胸の痛みはきっとこのまま消えていく。
これでいいのだ。
自分に言い聞かせた。

「失礼しました。ごゆっくり……」

笑顔を浮かべ、会議室をあとにした菅田さん。

菅田さんは、私達のこと勘違いしたのだろう。
でも今は、何も言い訳することもできなかった。
私が誰と何かあろうとも関心などないのだから。

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