双星の煌めきは月夜に魅せられて


「ねえ、それより今いくら持ってる?」



エレナは突然、俺のズボンやパーカーのポケットを手当たり次第何かを探し始めた。



「クスリ辞めるんじゃなかったのか?」


「それでも欲しいの!どこにあるの?」



残念ながら、今日はスマホ以外持ってきてないから財布は今手元にない。



こないだ逮捕されたジンさんが持っていたのは確かMDMAだった。


MDMAの依存症は他の薬物と比べると低い方だし、MDMA単独での依存はあまり見かけない。


エレナのこの薬物探索行動を見る限り、他の薬物にも手を出していると考えた方がいいだろう。



「ないじゃない!早くお金よこしてよ!!」



これは結構ヒステリックになってる。


激越になり激しく興奮している姿はとても痛々しく、クスリがないと生きていけない状態なんだなと実感した。



「オシャレしたいんじゃなかった?」


「明日から辞めたらいいの!だからちょうだい!」


「うん。じゃあ今日は我慢しなよ。
明日からって言って辞められたことある?」



今まで逮捕されてきた人達に共通していることは、明日から辞めるから今日で最後だとクスリに手を出して、結局次の日も飲んでしまうという負のサイクルを経験したことだ。

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