双星の煌めきは月夜に魅せられて


それでオーバートースという過剰摂取による死亡例も多く見てきた。


今日クスリを我慢したら、明日がやってきたらまたその今日も我慢する。


その繰り返しでクスリは抜けられると経験者が語る本があった。



「それは……ないけど」


「俺は君がクスリやってるからって、否定はしないよ。だから約束してほしい」



君の言葉は信じるから。


クスリを辞めたくても辞められないって。


だから、



「もしクスリやったらすぐに俺を呼んで」


「……もし言ったら怒る?」


「ううん、怒んない。俺も失敗したこと言うよ。
お互い失敗したこと暴露して、そんで成功したことを全力で祝おう」



クスリという地獄から地上に這い上がれたその時まで寄り添うのは、捜査協力者の仕事かどうかわからない。


しかし、少しでもひとりだけでもクスリに依存する人が減らすのは安全にも繋がるし、やってはいけないことではないと思う。


エレナは驚いたように目を見張り、ふわっと目を潤みながら笑みを浮かべる。


初めて、心からの笑顔に触れた気がした。

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