双星の煌めきは月夜に魅せられて

「……飲んじゃった。頑張るって決めたのに、早速破っちゃった」


「約束を破るとか考えないで」


「……あたしね、怖かった」



泣きながら告げられたことはとても俺には想像できないことで、同時に改めて認識した。


薬物乱用の恐ろしさを──



ドンドンっ


『警察だ!』



薬物の禁断症状で幻覚、幻聴というものがある。


授業でも軽くは触れているが、本当の恐ろしさを知らないままただ知識として吸収されているだろう。



『いや!捕まりたくない!!』



エレナは数日間、警察に追われていて、しまいには果てしなく遠い場所まで逃げ込んだそうだ。


砂漠まで逃げてしまったと言うエレナ。



もちろん、それは先程挙げた幻覚のひとつに過ぎないのだが、


俺が朝起きて、学校行って、宿題して、食べては寝るサイクルを数回繰り返した間、


彼女は何も飲食せず、ただただ幻覚の世界で苛まれたのだ。

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