双星の煌めきは月夜に魅せられて
「だけど桜蘭にいるのが楽しくなったら、なずなに彼氏ができちゃったんだ」
「そう、なんだ……」
「何もしなかったから失敗しちゃったっていう話」
これは失敗というよりは失恋なんだけど。
これも失敗のひとつでいいよな、成就できなかったんだから。
「エレナ?」
「ううん。なんでもない。話してくれてありがとう」
「こちらこそありがとう」
「……うん、やっぱり朔夜くんは笑った方がいいね!
前髪とか切ってみないの?」
「行く時がなくて」
最近は特に桜蘭のこととかで行く余裕がなかった。
よく周りから聞かれるのだが、行かないうちにこの髪型が落ち着いてしまったのだ。
「ほら、こうしたら絶対に似合うって……」
「……」
エレナは椅子から立ち上がって俺の前髪を上に上げて、正面から顔を覗く。