双星の煌めきは月夜に魅せられて
FIVE STARS
──これは月那の幼い記憶。
『さくやくん、かけっこまたイチバンだ!』
『さくやくん、めちゃくちゃカッコいい……!』
朔夜の幼少時代はこれはもうモテモテだった。
男の子のモテる基準が"足が速い"ということだったので、運動のできる朔夜がそうなるのは自然なことだった。
『ねえ、なんでつきなちゃんはかけっこイチバンじゃないの?』
『え?それは……』
『だって双子なんでしょ?さくやくんは足速いのに、つきなちゃんはかけっこビリだったじゃん』
月那は努力家だった。
かけっこの前日は朔夜と一緒に特訓していたというのもあって、純粋な言葉が突き刺さった。
パパに引き取られて、たくさんの愛情を注がれたというのが救いだったが、それでも誰かと比べられるという苦しみがあったようで。
『……っ』
月那は何も答えられずにただ唇を噛み締めていた。