双星の煌めきは月夜に魅せられて
本当にすごいと思う。
自分の理想に向かって行動に移せて、私とは大違い。
『将来、何になりたいの?』
──私には夢というものがない。
それ以前に、やりたいことがない。
さらには"〇〇がいい!"という自分の好みもすら分からない。
『先のことなんてそんなに考えてなかった』
『へえ、てっきり医者とかそういうのかと思ってたから意外。まあ、なりたいものとかすぐ見つかるものじゃないしね』
『……そうだね』
いつの日にか今日のご飯も朔夜の好物に偏ったメニューが多くなった。
好きなお菓子は趣味の悪い味にすれば、相手に印象を残せるから納豆わさび味のポテチに"しておいた"。
「……い、おい、どうした?」
「あ……」
「珍しいな。人の話を聞いてないって、バイクの爆音で聞こえなかっただけだったらいいけど」
「ごめん、考え事してた」