双星の煌めきは月夜に魅せられて
考え事しながら話をするなんて、私の中では当たり前で出来ないと困ることだったのに。
「……」
朔夜に好きな人ができた時。
周りが好きなことに関してイキイキしている時。
私にはそれらを見て羨ましいと思うこともあった。
だけどその感情は全て隠さなければいけなかった、隅に追いやらなければならなかった。
そして、消えたと錯覚してしまっているんだ。
でも、優生のことになれば全てが乱される。
「いつか気持ちが現れる日がくるかな」
バイクの爆音に紛れて小さく呟いた言葉。
「お前はもう笑えてる。トラウマだってもう消えただろ?」
彼の耳には届いたのか分からなかったけど、私を考慮しての発言であるのは明らかだった。
そういえば、私はトラウマを上書きするためにここに潜入したんだったっけ。
あの時、怖い思いは一切しなかったし、ただ桜蘭に入らなくてはということだけを考えてたから。
でも消えたと言ってしまえば、桜蘭にいる理由がなくなってしまう。