双星の煌めきは月夜に魅せられて
「ううん、何でもないよ!ただ目眩がしちゃって……」
「大丈夫か?帰る?」
「うん。申し訳ないけどそうさせてもらおうかな」
目眩は咄嗟の嘘だけれど、これ以上感情に振り回される自分を、
エレナを慈しむ目で見つめる優生を見たくなかった。
「じゃあ、俺も帰るよ。月那、鞄持ったか?」
「大丈夫だよ!ひとりで帰れるから!」
「馬鹿。体調不良のやつをひとりにするかよ」
私のついた嘘なのに、なんだか申し訳ない。
とはいえ、今更訂正するわけにもいかないので、お言葉に甘えることにした。
「じゃあな朔夜。明日来るか?」
「月那の体調次第だな」
「月那もゆっくり治してから来いよ」
優生に気を配られたことに嬉しく思いながらも「わかった」と短く返した。
そして、帰ろうとドアノブに手をかけたその刹那──