双星の煌めきは月夜に魅せられて
「僕も女に対して色んな顔をするし、ツキだって微妙にだけど全部違う顔だったからね。
だからいつか本当のツキを見たいって思ったのがきっかけ。さっきの笑顔を見れてたまらなく嬉しかったよ」
「嬉しかった?」
「うん。あと可愛いなって思った」
心臓に悪いことを先程からおっしゃっているのだが。
仮にも腰に手を回しているのだから、胸の鼓動が向こうに聞こえてしまう。
「今は違うけど、ツキと出会う前の僕は自分の損得しか考えなかったね。色んな女に貢いでもらって、そのお金で生活してた」
「……一応朔夜から聞いてるわ」
光希は自分の損得で動く人間だ。
それは主に女関係に関して。
使えないと思った女性は容赦なく徹底的に手を切ったり、使える女性にはとことん媚びを売る。
あの天使からはとても想像ができないが、これはれっきとした事実らしい。
らしい、というのは私が実際、光希が女性に愛想を振りまくところを見たことがないからだ。
今は違うというのなら、それらは全て過去形になるけど。
でも、光希が私に好意を寄せてくれるのは嬉しいが、私には好きな人がいるのだ。
どうしようもなく、ただただ好きな人が。