双星の煌めきは月夜に魅せられて






もちろんそんなことは月那に言えるわけがないから、妥協策も思いつくはずがなく、エレナと出かける当日を迎えた。


待ち合わせは開館時刻の朝の10時に少し離れた水族館の最寄り駅。


俺はその15分前に着いて、スマートフォンをいじりながらエレナを待っていた。



俺がやってることはエレナを裏切る行為でもある。


エレナを逮捕に導く捜査協力者、それを知ったら彼女はどう思うんだろう。


今日、エレナを精一杯楽しませたいという俺の気持ちまで、彼女にとっての嘘にされてしまうのだろうか。



「朔夜くん!」



心地いい高い声が聞こえて、スマートフォンの電源を切って目線を上げた。



「……っ」



袖に花のような小さなシフォンがあしらわれた薄いピンクのカットソー。

花柄の白いスカート、アクセントにベージュのベルト。

髪も少し巻いてあって、オシャレしてくれたのがすぐに分かった。



「お待たせ!待たせちゃったね!」


「ううん、今来たとこ」



手を引いて「早く行こう!」と弾んだ声で歩き始めたエレナに俺は笑顔で横に並んだ。
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