双星の煌めきは月夜に魅せられて






最寄駅に着いた時にはもう高校生が出歩く時刻ではなかった。


こんな夜遅くまで月那を留守番させてしまった。


月那に申し訳ない気持ちが芽生え、急いで帰宅した。


鍵を開けて、家の中に入る。しかし、いつもならすぐに聞こえるおかえりの声が来なかったので、俺は何か違和感を感じた。



「……月那?」



妹がいるのか確認すると、扉の向こうで月那の姿が見えたのでひどく安堵した。


透明なガラス付きの扉で、向こうのリビングの様子が丸見えなのだ。



「はい……はい、判りました。では、朔夜に伝えておきます」



月那はどうやら電話しているようで、スマートフォンを耳に当てている。


その口から俺の名前が出てくることで、場が張り詰める空気に変わって、冷や汗をかいた。



「この度は大変申し訳ありませんでした」



そして、良くないことが起きたと理解した。


やがて話し声が聞こえなくなり、俺はそーっと扉を開けてリビングに向かったのだった。



「……」



月那は俺を静かに見るが、何も声をかけず思案を巡らせる表情をする。
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