双星の煌めきは月夜に魅せられて

「……ちょっと、待って」



静かに心の中で鼓舞する私達にあるひとつの困惑の声。


声の主は、何故か青ざめた千尋だった。



「千尋、どうしたんだ?」



ただごとじゃないと思った優生はすかさず千尋に問いかける。


さっきまで穏やかとは程遠い野生の狼、みたいな表情をしていたのに、どうしたんだろう……。



「今、組長が向かってるって、桜蘭の倉庫だよね?」


「ああ、それがどうかしたか?」


「……あり得ない。どうして」



呆然としたように呟く千尋に誰も状況を呑み込めない。



「僕とエレナは言ってないはずなのに、なんで場所を知ってるの?」


「え?」



皆がさらに理解に苦しむ中、頭の回転が速い私はすぐに反応を示した。



「僕だって桜蘭の場所が分からなかったんだ。謎だらけな桜蘭の住処を、なんであの人が……」



そして、さらに謎に包まれた。

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