双星の煌めきは月夜に魅せられて

とてつもない安心感に包まれたその時──



「へえ、こんなところにいたんだ、お姫様は」


「……!」



背中にぞくりと寒気が走る。


この声……三村だ……っ


震えそうになりそうな身体をなんとか持ち堪えながら、静かに声の方へ向いた。



「てめえがアイツらを変えたのか?
てめえのせいで、俺の計画がズタボロじゃねえか!」



憤って、眼光が大きく開かれる。


私は尋常じゃない様子にあることに気づいた。


そしてさらに、声がかすれ始めていることにも気づいた。



……この症状、絶対にあのクスリを飲んだに違いない。


エレナが所持していた危険ドラッグの名前はモト。


その名の由来はウガリット神話に出てきた神様の名前からだと私が勝手に仮説を立てた。


モトの別名は、炎と乾季と死の神。


炎のように激しく興奮し、なんでもできるという高揚な気分にさせたのち、乾季のように異常な喉の渇きを覚えてしばらく経てば、死んでしまう恐れがあるというものだ。

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