双星の煌めきは月夜に魅せられて






「失礼します」


扉の前でノックしてしばらくすれば、優生からの許可の声が聞こえ、俺はドアノブを回した。



「ちょうどお前の話をしていたんだ」



入るなり、胡桃色の髪の女を愛おしそうに見つめながら言った優生。


俺は月那の様子を窺いながら、空いてた椅子に腰掛けて優生の言葉を待った。



「……」



月那の本当の感情が分からなくなったのはいつからだろうか。


ほんと気づいたらだったな、双子の兄なのに妹がどんな気持ちでいるのか汲み取ることができなくなってしまった。


俺が心配しなくても月那なら大丈夫なんだろうけど、一応拉致られた身なのに平然として幹部達を見ている。



「エレナとは初めましてだったよな。エレナは忙しいからあまりここには来ないんだ」


「朔夜くん?月那とどことなく似てるね!
初めまして、橋本エレナっていいます。よろしくね!」



気持ち悪いくらいの愛想笑いで俺に握手を求めた橋本エレナ。


俺はぎこちなく手を差し出して、握手を交わした。

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