双星の煌めきは月夜に魅せられて
「……うそ」
「エレナさん?誰だソイツ?」
「え、ああ、人違いじゃないのかしら?
それより渡したんだからちょうだいよ」
この誤魔化し方といい、橋本エレナで間違いないだろう。
それにしても、俺がいるってのにクスリを要求するなんて結構重症なんじゃねーのか?
とりあえずここはクスリの取引を中止にさせないと、女子高生がクスリなんて危ないに決まってる。
俺はスマホを取り出して、父さんに連絡する。
「警察ですか?クスリの取引を見かけたので逮捕してほしいんですけど……」
『朔夜か、了解。人回しとくから』
普通の取引なら110番に通報するのだが、今回は三村胡桃関連だから父さんに電話した。
俺が場所を伝えれば、父さんはすぐ電話を切ってしまった。
……忙しいのかな、申し訳ない。
「おい、今サツに連絡しただろ!?」
「うそ……逃げて!」
橋本エレナ……今は三村胡桃と言った方がいいか、三村胡桃は売人を逃すよう俺の前に立ち塞がる。