秘密の抱き枕
「誰かと買い物なんて久しぶりだな…。」

「きーくん!みてみて!面白い形の人参があるよ!」

「あんまはしゃぎすぎんなよ~」

スーパーに来たことが無い子供みたいに鳴はずっと目を輝かせ、はしゃぎまくっている。

これとこれとこれとこれと………あとはあれだな…

「鳴ー行くぞ~……って鳴?」

おかしい。先程まで後ろにいたはずの鳴がどこかに行ってしまった。

「鳴?!」

カートをその辺に置き、スーパーの中を探し回る。すると……

「あ、きーくん。このお肉美味しいよ~。買ってこうよ!」

……肉コーナーの試食を食べいた。

「にーちゃんいい顔するね~。これどんな調理しても美味しいから買っていきなよ。」

おばちゃんに褒められながら2つ目の肉に手を出している……

「おい鳴。俺らの目的はその肉じゃないだろ。あっちの安売りの卵だ。ほらいくぞ~!」

「えーこのお肉買っていこうよ~いいでしょ?ねぇ。美味しくしてあげるからさー。ほらお肉さんも買ってほしそうにしてるよ。」

鳴がそう言うと、おばちゃんが笑いだした。

「はっはっはっ。にーちゃん面白いこと言うね!ほらこっそり割引にしてあげるから買っていきな。」

「え!いいんすかお母さん!!」

割引という言葉に思わず反応してしまう。やってしまったと思ったが時すでに遅し。おばちゃんは割引シールを貼って、鳴が嬉しそうに受け取る。

「あ、きーくん。カートは?」

「ああ、あそこ置いてきてた。ちょっととってくるな!」

「はーい。転んじゃダメだよ~」

呑気にそういった鳴に背を向け、カートを取りに行く。


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