†戦慄の交響曲†
それから、異常が無いため、家に戻った。否、戻るフリをした。


沙羅は、それから、一人で広場に向かった。



「ねぇ?居るんでしょ?」


広場には誰も居ない。



けれど、沙羅は誰かに声をかけている。




「ねぇ・・・貴女達はどうして、生贄になったの?」



そう、生贄にされてきた女達が居たのだ。



霊力が膨大にあり霊が見える体質の沙羅。


清めと浄化の能力を持つ沙羅には、こういう類が多く集まってきていた。



『私達は・・・霊感がありと黒髪そして満14歳でした・・・』


一人の少女が話し出す。


『初めは喜びました。だって、栄光とされるからです。
ですが、生贄として、山に入ったときは・・・恐ろしくなりました』


『私の時には、白蛇の使者と名乗る男性が迎えきました』


『え?私の時には、狐のお面を被った人が迎えに来ましたよ?』


などと、色々な情報が入ってきた。


「そう、ありがとう。私が仲間と一緒に始末するからね」


そう言って、沙羅は少女達に手を向けた。


手からは温かな光が零れた。


「―安らかな訪れよ

我は汝に教えよう

汝よ

清らかに

安らかに

眠れ

転生の時まで―」


お経でもない、言葉。


これは、簡単な呪詞。


呪う為の言葉じゃない。祈るための言葉。


少女達が笑顔で天に昇っていく。



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