あの夏の君をさがす

                ない。 ない。
                 もうない。  
                どこを探しても。
                 何を見ても。
                もうどこにもない。
                  何も。
               記すものはもうないのだ。                           真っ白いノートのように
                 今の私は

                 空っぽだ。






               あの時 あの場所 
                あの時間から
         私の時計は針を進める方法を忘れてしまった。

                 同じ場所で
               カチッ、カチッ
               秒針の音だけがする。



           それでも歳月は経ってしまうもので
              気が付けばもうそれは
               5年以上前のこと。









               後悔だけが残る。
           もう二度と巻き戻せないあの時間を…。







        だからせめてもう一度だけでもいいから会いたい。
               これはなんの因果か
            それはただの偶然だと思いたい。




         当時よく電話越しに話してたあのお店に行けば
               会えるのかもしれない。
                もしかしたら…
             さっきまでいたかもしれない。
               今から来るかもしれない。
               自分が気づかないだけで

                 もしかしたら
                   「今」
              同じ空間にいるかもしれない。






               そんな淡い期待を抱いて
                   私は今日も
               その場所に向かうのです。
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