世界最後の朝を君と
深々と土下座をする店長(勝手に敬称略)のつむじを見下しながら「はいはい。で、頼みたい事って何ですか」とため息まじりに言う。
「あー、それで俺、何で成仏しなかったんだろうって考えた。そして分かった。俺は俺を殺した犯人が憎い。憎くて仕方ねえ。恐らく俺は犯人が逮捕されるまで成仏出来ねえ。ていうかしたくねえ。」
「…気持ちは分かりますけど、私にどうしろっていうんですか? そういうのは警察官とかの方がいいんじゃないですか? こんなどこにでもいる高校生なんかよりも。」
私がそう言うと、店長は「一応俺、交番にも行ったんだわ。でもやっぱり誰も俺の事が見えねえんだよ。諦めて地縛霊にでもなるしかねえって思いながら、ダメ元でお前の家に行ったんだよ」と頭をポリポリと掻く。
「でも幸い! お前は犯人の顔を見ている! お前と俺が協力すれば絶対捕まえられる!」
店長は私の肩をガッと掴み、前後に揺さぶる。
「…確かに見ましたけど、サングラスにマスクだったので、誰か分かりませんでしたよ」
されるがままに体を揺さぶられる私。
「実はな、俺、犯人の手がかりになる決定的証拠を見つけたんだよ」
店長は私の肩から手を離し、口に手を当てて小声で囁く。私が「証拠?」と聞き直すと、店長は頷き、口を開く。
「確かに犯人はマスクとグラサンをしてて顔は見えなかった。が、服装だ。奴の服装を死ぬ間際に見た。これが決定的な証拠だ」
「…それで、その証拠の服装っていうのは…?」
「…覚悟して聞けよ。実は、そいつが着ていた服が…」
その後店長が放った言葉に開いた口が塞がらなくなった。驚き過ぎて、声が出ない。ものすごい絶望感と恐怖感が私にのしかかる。それと同時に、私は必ず犯人を捕まえなければいけない、と強く思った。
「必ず、犯人を捕まえなきゃ」
「あぁ、そうこなきゃな」
店長はまた小さく笑う。
私達は顔を見合わせ、頷く。
「じゃあ、とりあえず今日は寝るか」
「そうですね」と私はベットに足を入れる。
「おやすみなさ…って、人のベットに勝手に入らないでください!」
「おぉ結構寝心地いいじゃん」
「ちょっと! 変態! 幽霊は床で寝てください!」
「おい! ひでーぞ! 幽霊にも人権はあるんだぞ!」
「意味分かんない事言わないでください!」
ベットの上で押し合っていると、扉の向こうから「咲希! 何時だと思ってるの! 電話するなら朝にしなさい!」というお母さんの怒った声が聞こえてきた。
私と店長は顔を見合わせて、二人同時に吹き出す。
私は「ごめんなさい」と笑いを堪えながら声を上げる。
結局、笑い疲れた私達は、ベットの上で布団もかけずに、二人肩を並べて寝落ちしてしまった。
二人の寝息、実際には私の寝息のみが、しんと静まった部屋に響いていた。
この時の私はまだ想像もしていなかった。
この日を堺に私の人生が大きく変わっていく事を。
「あー、それで俺、何で成仏しなかったんだろうって考えた。そして分かった。俺は俺を殺した犯人が憎い。憎くて仕方ねえ。恐らく俺は犯人が逮捕されるまで成仏出来ねえ。ていうかしたくねえ。」
「…気持ちは分かりますけど、私にどうしろっていうんですか? そういうのは警察官とかの方がいいんじゃないですか? こんなどこにでもいる高校生なんかよりも。」
私がそう言うと、店長は「一応俺、交番にも行ったんだわ。でもやっぱり誰も俺の事が見えねえんだよ。諦めて地縛霊にでもなるしかねえって思いながら、ダメ元でお前の家に行ったんだよ」と頭をポリポリと掻く。
「でも幸い! お前は犯人の顔を見ている! お前と俺が協力すれば絶対捕まえられる!」
店長は私の肩をガッと掴み、前後に揺さぶる。
「…確かに見ましたけど、サングラスにマスクだったので、誰か分かりませんでしたよ」
されるがままに体を揺さぶられる私。
「実はな、俺、犯人の手がかりになる決定的証拠を見つけたんだよ」
店長は私の肩から手を離し、口に手を当てて小声で囁く。私が「証拠?」と聞き直すと、店長は頷き、口を開く。
「確かに犯人はマスクとグラサンをしてて顔は見えなかった。が、服装だ。奴の服装を死ぬ間際に見た。これが決定的な証拠だ」
「…それで、その証拠の服装っていうのは…?」
「…覚悟して聞けよ。実は、そいつが着ていた服が…」
その後店長が放った言葉に開いた口が塞がらなくなった。驚き過ぎて、声が出ない。ものすごい絶望感と恐怖感が私にのしかかる。それと同時に、私は必ず犯人を捕まえなければいけない、と強く思った。
「必ず、犯人を捕まえなきゃ」
「あぁ、そうこなきゃな」
店長はまた小さく笑う。
私達は顔を見合わせ、頷く。
「じゃあ、とりあえず今日は寝るか」
「そうですね」と私はベットに足を入れる。
「おやすみなさ…って、人のベットに勝手に入らないでください!」
「おぉ結構寝心地いいじゃん」
「ちょっと! 変態! 幽霊は床で寝てください!」
「おい! ひでーぞ! 幽霊にも人権はあるんだぞ!」
「意味分かんない事言わないでください!」
ベットの上で押し合っていると、扉の向こうから「咲希! 何時だと思ってるの! 電話するなら朝にしなさい!」というお母さんの怒った声が聞こえてきた。
私と店長は顔を見合わせて、二人同時に吹き出す。
私は「ごめんなさい」と笑いを堪えながら声を上げる。
結局、笑い疲れた私達は、ベットの上で布団もかけずに、二人肩を並べて寝落ちしてしまった。
二人の寝息、実際には私の寝息のみが、しんと静まった部屋に響いていた。
この時の私はまだ想像もしていなかった。
この日を堺に私の人生が大きく変わっていく事を。