世界最後の朝を君と
そして、肩を落としながら朝食を済ませた私は、学校に向かう途中だ。

「でもまあ、4000円で俺の命が救われたって思えば、安いもんだろ? あ、俺死んでるんだった」
「安くないです。高校生にとっては貴重な4000円なんです。もうこうなったら、犯人捕まえるまで絶対成仏しないでくださいよ」

私はギロリと店長を睨みながら念を押す。

「分かったって。まな板JK」

私は「そういう所でしょ!?」と怒鳴る。

ブロック塀に止まっていた雀が驚いて一斉に飛び立つ。

「おい、落ち着けって。あんまりペラペラ話すと、お前、傍から見ると、一人で話してる変人だぞ?」

店長になだめられ、怒りでわなわなと震えていた私はハッと我に帰る。

そうだ。

店長は私にしか見えない。

あんまり話していると、不審者に間違えられかねない。

「じゃあ店長、あんまり学校で話しかけないでくださいね?」
「おうよ。俺は学校中回って、可愛い女子高生巡りしとくからよ」

そう言う店長の顔は、いつになく輝いている。

「はいはい。好きにしてください。くれぐれも女子トイレと更衣室は覗かないでくださいよ」
「あ、そうか。覗いてもバレないのか! 幽霊最高!」

歩道の真ん中でガッツポーズをする店長に一瞬白い目を向け、スタスタと歩き去る。

「最低ですね」
「冗談だって! 俺みたいなイケメン紳士がそんなことする訳ねえじゃん!」

店長は私に駆け寄り、私の肩をバシッと叩く。

私ははぁ、と大きなため息をひとつつく。

ていうか、私、店長が現れてから、どんだけため息ついてるんだろ。

犯人捕まえた頃には、幸せ全部逃げてそう…

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