世界最後の朝を君と
「セーフ!」
ホームルームの始まりを告げる鐘が鳴る5分前に教室に滑り込んだ私達は、教室に入るなり、クラスメートに囲まれる。
「立花さん、大丈夫!?」
「みな美から聞いたよ! 大変だったね」
「え? 立花さんがどうしたの?」
男子生徒が首を傾げると、一人の女子生徒が「昨日のラーメン屋さんの事件、立花さんが現場にいたんだって。みな美が女子グルにRINEしてくれたの」と説明する。
「まじか! 知らなかった!」
「怪我は無い?」
矢継ぎ早に質問をしてくるクラスメートに困惑している私を見て、みな美は眉をひそめて「咲希困ってるじゃん。咲希は大丈夫だって。ね?咲希」と言い、私の顔を見る。
私がコクコクと首を上下に降ると、クラスメートは「じゃあ大丈夫だね」「よかった~」と口々に言いながら、散らばる。
私が自分の席に着くと、一人の男子が教室のドアを開け、私に近付いてくる。
「おはよ、立花さん…大丈夫なの?」
長めの前髪が目にかかっていて、少し暗い雰囲気の彼は黒山純輔君だ。
黒山君とは、高校に入学してから、些細な事かきっかけで話すようになった。
入学当初、友達が少なかった私にとっては唯一と言っても良い話し相手で、よく遊びに行く仲だった。
が、今年になって、黒山君が突然陸上部に入部してから、中々遊ぶ日が無くなってしまった。
背が高くて足が長い黒山君は陸上部でも活躍していて、中高一貫で帰宅部の私からしたら見習いたい限りだ。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
私が口角を上げると、黒山君は「そう…」と目を反らし、頭を掻く。黒山君がよくやる癖だ。
「あの…刺された人って…立花さんの知り合い…とか?」
黒山君が私に問う。
「え? なんで? 全然知らない人だよ?」
私がそう答えると、黒山君は「えっ」と少し目を見開く。そしてしばらく黙り込む。
「…そうなの。気絶したくらいだから…知り合いかと…」
「いや、全然! ちょっと驚いて気絶しただけ! なんか、大事になってて恥ずかしいなあ」
本当に恥ずかしい。みな実は全然ぴんぴんしてるのに。目の前で親や兄弟が殺されたならまだしも。
「……うん。でもまあ、戸田さんがいて、良かったね…じゃあ、心配無いや。…あ、ホームルーム、始まるから」
私は「うん。なんかごめんね」と手を合わせると、黒山君はゆっくりと自分の席に戻る。
ホームルームの始まりを告げる鐘が鳴る5分前に教室に滑り込んだ私達は、教室に入るなり、クラスメートに囲まれる。
「立花さん、大丈夫!?」
「みな美から聞いたよ! 大変だったね」
「え? 立花さんがどうしたの?」
男子生徒が首を傾げると、一人の女子生徒が「昨日のラーメン屋さんの事件、立花さんが現場にいたんだって。みな美が女子グルにRINEしてくれたの」と説明する。
「まじか! 知らなかった!」
「怪我は無い?」
矢継ぎ早に質問をしてくるクラスメートに困惑している私を見て、みな美は眉をひそめて「咲希困ってるじゃん。咲希は大丈夫だって。ね?咲希」と言い、私の顔を見る。
私がコクコクと首を上下に降ると、クラスメートは「じゃあ大丈夫だね」「よかった~」と口々に言いながら、散らばる。
私が自分の席に着くと、一人の男子が教室のドアを開け、私に近付いてくる。
「おはよ、立花さん…大丈夫なの?」
長めの前髪が目にかかっていて、少し暗い雰囲気の彼は黒山純輔君だ。
黒山君とは、高校に入学してから、些細な事かきっかけで話すようになった。
入学当初、友達が少なかった私にとっては唯一と言っても良い話し相手で、よく遊びに行く仲だった。
が、今年になって、黒山君が突然陸上部に入部してから、中々遊ぶ日が無くなってしまった。
背が高くて足が長い黒山君は陸上部でも活躍していて、中高一貫で帰宅部の私からしたら見習いたい限りだ。
「大丈夫だよ。心配してくれてありがとう」
私が口角を上げると、黒山君は「そう…」と目を反らし、頭を掻く。黒山君がよくやる癖だ。
「あの…刺された人って…立花さんの知り合い…とか?」
黒山君が私に問う。
「え? なんで? 全然知らない人だよ?」
私がそう答えると、黒山君は「えっ」と少し目を見開く。そしてしばらく黙り込む。
「…そうなの。気絶したくらいだから…知り合いかと…」
「いや、全然! ちょっと驚いて気絶しただけ! なんか、大事になってて恥ずかしいなあ」
本当に恥ずかしい。みな実は全然ぴんぴんしてるのに。目の前で親や兄弟が殺されたならまだしも。
「……うん。でもまあ、戸田さんがいて、良かったね…じゃあ、心配無いや。…あ、ホームルーム、始まるから」
私は「うん。なんかごめんね」と手を合わせると、黒山君はゆっくりと自分の席に戻る。