世界最後の朝を君と
「ど、どうゆうことなの、これ!?」

みな美は私の部屋に入った途端、顔を真っ青にした。

当然だ。

私の部屋では店長がノートやら椅子やらを持ち上げて歩き回っているからだ。

「突然で本当に申し訳無いんだけど、聞いてくれる?」

私はみな美をクッションの上に座らせる。

「今、私の部屋に、あのラーメン屋さんの、殺された店長さんの幽霊がいるの」
「…は?」

みな実はぽかんと口を開けている。

「その椅子とノートを持ち上げてるのも、店長さん。店長、おろしてください」

私が振り返り、店長に目配せすると、店長は「おうよ」と椅子とノートを床に置く。

「ほ、本当に幽霊がいるの?」
「うん。私にしか見えてないけど。信じてくれる?」

みな美は置かれた椅子をじっと見つめ、黙ったままだ。

店長は「はあ」と大きなため息を一つつく。そして諦めたような口調で続ける。

「ま、こんな話信じるのなんて、馬鹿か変態しか…」
「すっごいね!!」

突然、みな美が顔を輝かせて、そう叫んだ。

「私、幽霊とかポルダーガイストとか全ッ然信じてなかったけど、本当にあったんだね! 今めっちゃ興奮してる! やばい!」

みな美の頬は赤く染まり、目はまるでツチノコでも見かけた時の様に潤んできらめいている。

「ほ、本当に信じてくれるんだ!」

私は思わずみな美の手を握り、上下に降る。

「…ははは。さてはみな美ちゃん、馬鹿だな」

そういいながら店長は、床に置いたノートを手に取り、ページを1枚破る。

「え、なになに、店長さん! 何するの!」

ワクワク顔のみな美。

店長は机に向かい何かを書いてから、バッとこちらに見えるようにページを掲げた。

「ありがとな。可愛い女子高生」

ページにはそう書かれていた。

「きゃー! イケメンに可愛いって言われちゃった! どうしよ!」

みな美は頬に手を当て、体をくねくねとひねる。

「良かった。なら、話は早いよ。みな美、協力してくれる?」

私が尋ねると、みな美は「任せといて!」と白い歯を見せた。
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