世界最後の朝を君と
帰宅した私はすぐにお風呂を済ませ、部屋に戻る。
ドアを開け、部屋の明かりを付ける。
「うわっ」
思わず私は声を上げてしまう。
ベッドの上で、店長がうつ伏せで寝ていたからだ。
店長は遊ばれた後、放置された人形の様に、ピクリとも動かない。
「…ん?」
店長が突然こちらを向く。
「…あぁ、お帰り」
いかにも元気がなさそうな声の店長。
「た、ただいまですけど…どうしたんですか」
私はドアを閉め、ベッドの縁に座る。
店長はゆっくりと体を起こし、私の隣に腰を下ろす。
「なんかさ」
「はい」
「さっき、アイツに会って、改めて実感が湧いたんだ。『あぁ、ホントに俺、死んだんだな』って。なんかすげえ急すぎてさ。家族とか、友達とか、あいつらに、別れの一つも言えなかった。案外あっけないんだな。人が死ぬのって」
笑いながらそう言う店長の目は、遠くを見つめていて、どこか悲しげな感じだ。
「今頃、母さん、泣いてるかな。まさか親より早く死ぬなんて、想像もしてなかった」
店長の声が、震え始める。
ちら、と店長の顔をチラ見すると、店長の頬は涙でべしょべしょだった。
「あー、もう…女の前で泣くとか、ダッサ…俺」
必死に涙を腕で拭う店長。
「わり…すぐ泣き止むから…」
店長がそう言った瞬間。
私は気がつくと、店長の体を抱き寄せていた。
「泣いていいですよ」
私がそう言うと、店長は蚊の鳴く声で「え?」と言う。
「突然殺されて、未来を奪われて、悲しくないはずが無いですよ。それなのに、店長、一度も泣かないじゃないですか」
そう。
思い出しても、店長はずっと笑っていた。
辛かったんだ。我慢してたんだ。
「泣いていいですよ。店長の涙が枯れるまで、私がずっと、こうやって抱き締めてますから」
うわ、なんか、ものすごい恥ずかしい言い方しちゃった。
これじゃ、私と店長がカップルみたいじゃん。
突然恥ずかしくなり、頬がだんだん熱くなるのを感じる。
「あ、いや、今のはそういう意味じゃなくて、その、なんというか、あの」
一人でテンパる私を完全に無視して、店長は私の背中に手を回し、強く抱き締める。
「うっ、うう」
店長のこもった泣き声が聞こえてくる。
店長の肩は小刻みに震えていた。
私は、店長の頭を、胸で強く、ぎゅっと、抱き締める。
生身の人間の温もりは、全く無い。
店長のどこを触っても、まるで柔らかいマネキンの様。
でも、気のせいか、どこか温かい感じがした。
店長の頭をそっと撫でる。
「俺…俺」
「なんですか?」
私は、店長の肩に顎を置き、ひたすら頭を撫でた。
店長が泣き止み、寝息をたてる頃には、時計の針は0時を指していた。
ドアを開け、部屋の明かりを付ける。
「うわっ」
思わず私は声を上げてしまう。
ベッドの上で、店長がうつ伏せで寝ていたからだ。
店長は遊ばれた後、放置された人形の様に、ピクリとも動かない。
「…ん?」
店長が突然こちらを向く。
「…あぁ、お帰り」
いかにも元気がなさそうな声の店長。
「た、ただいまですけど…どうしたんですか」
私はドアを閉め、ベッドの縁に座る。
店長はゆっくりと体を起こし、私の隣に腰を下ろす。
「なんかさ」
「はい」
「さっき、アイツに会って、改めて実感が湧いたんだ。『あぁ、ホントに俺、死んだんだな』って。なんかすげえ急すぎてさ。家族とか、友達とか、あいつらに、別れの一つも言えなかった。案外あっけないんだな。人が死ぬのって」
笑いながらそう言う店長の目は、遠くを見つめていて、どこか悲しげな感じだ。
「今頃、母さん、泣いてるかな。まさか親より早く死ぬなんて、想像もしてなかった」
店長の声が、震え始める。
ちら、と店長の顔をチラ見すると、店長の頬は涙でべしょべしょだった。
「あー、もう…女の前で泣くとか、ダッサ…俺」
必死に涙を腕で拭う店長。
「わり…すぐ泣き止むから…」
店長がそう言った瞬間。
私は気がつくと、店長の体を抱き寄せていた。
「泣いていいですよ」
私がそう言うと、店長は蚊の鳴く声で「え?」と言う。
「突然殺されて、未来を奪われて、悲しくないはずが無いですよ。それなのに、店長、一度も泣かないじゃないですか」
そう。
思い出しても、店長はずっと笑っていた。
辛かったんだ。我慢してたんだ。
「泣いていいですよ。店長の涙が枯れるまで、私がずっと、こうやって抱き締めてますから」
うわ、なんか、ものすごい恥ずかしい言い方しちゃった。
これじゃ、私と店長がカップルみたいじゃん。
突然恥ずかしくなり、頬がだんだん熱くなるのを感じる。
「あ、いや、今のはそういう意味じゃなくて、その、なんというか、あの」
一人でテンパる私を完全に無視して、店長は私の背中に手を回し、強く抱き締める。
「うっ、うう」
店長のこもった泣き声が聞こえてくる。
店長の肩は小刻みに震えていた。
私は、店長の頭を、胸で強く、ぎゅっと、抱き締める。
生身の人間の温もりは、全く無い。
店長のどこを触っても、まるで柔らかいマネキンの様。
でも、気のせいか、どこか温かい感じがした。
店長の頭をそっと撫でる。
「俺…俺」
「なんですか?」
私は、店長の肩に顎を置き、ひたすら頭を撫でた。
店長が泣き止み、寝息をたてる頃には、時計の針は0時を指していた。