世界最後の朝を君と
私は部屋に入ると、言葉を失った。
そこはまるで、自宅の一室の様だった。
この学校に入学して一年ちょっと経つが、こんな部屋があるなんて全く知らなかった。
六畳程の狭い部屋の中には、一台のパソコンが置かれた机と、皺が寄った敷布団、ぼろぼろのソファ、木の勉強机が置かれていた。
勉強机には数Ⅰの教科書が無造作に置かれており、彼女が後輩である事が分かった。
女子生徒は部屋には入るやいなや、机に座り、パソコンを触り始める。
ダダダダっとドラマで観る様な素早いタイピングの音が、部屋に響く。
「あの、ここはどこですか?」
私が恐る恐る声をかけると、女子生徒はこちらに顔も向けず、答える。
「ブレークルーム。センパイ、2年生なのに知らないんだ」
どうして学年が…と言いかけて、女子生徒が私のスリッパを見ている事に気が付いた。
2年生の私のスリッパは青色、彼女のスリッパは1年生の緑色だった。
「ブレーク、ルームって?」
「私みたいな不登校が通う場所」
カンッ。
女子生徒はエンターキーを強く押した。
返す言葉が見つからず、私が黙り込んでいると、女子生徒は突然パソコンから顔を上げる。
「…ていうか、もう出ていってもらえませんか? これだけ隠れていればもう大丈夫でしょ」
女子生徒はピシャリと言い放つと、再びパソコンに目を向ける。
確かに、もう部屋から出ても、西ヶ崎さんはいないだろう。
しかし、私は彼女のさっきの言葉が妙に胸につかえていた。
“不登校”。
重たい響きのその言葉は、私にとって、全くの無関係では無かったからだ。
私は、彼女の顔色をうかがいながら、小さな声で尋ねる。
「えっ…えっと…その…せめて、名前だけでも教えてくれませんか?」
「…どうして赤の他人に名前を教えなきゃいけないんですか?」
女子生徒の低い声に少し怯みながらも、私は続ける。
「ここで会ったのも何かの縁だろうし…少し話とかしない?」
「結構です。私、話すの苦手なので」
「え、えっと、あ! パソコン! ゲームとかしてるの?」
「あ、餅ネコ始まる時間だ」
女子生徒がふと掛け時計を見上げ、呟く。
私はハッとして掛け時計に目を向ける。
「あと1分…!?」
そこはまるで、自宅の一室の様だった。
この学校に入学して一年ちょっと経つが、こんな部屋があるなんて全く知らなかった。
六畳程の狭い部屋の中には、一台のパソコンが置かれた机と、皺が寄った敷布団、ぼろぼろのソファ、木の勉強机が置かれていた。
勉強机には数Ⅰの教科書が無造作に置かれており、彼女が後輩である事が分かった。
女子生徒は部屋には入るやいなや、机に座り、パソコンを触り始める。
ダダダダっとドラマで観る様な素早いタイピングの音が、部屋に響く。
「あの、ここはどこですか?」
私が恐る恐る声をかけると、女子生徒はこちらに顔も向けず、答える。
「ブレークルーム。センパイ、2年生なのに知らないんだ」
どうして学年が…と言いかけて、女子生徒が私のスリッパを見ている事に気が付いた。
2年生の私のスリッパは青色、彼女のスリッパは1年生の緑色だった。
「ブレーク、ルームって?」
「私みたいな不登校が通う場所」
カンッ。
女子生徒はエンターキーを強く押した。
返す言葉が見つからず、私が黙り込んでいると、女子生徒は突然パソコンから顔を上げる。
「…ていうか、もう出ていってもらえませんか? これだけ隠れていればもう大丈夫でしょ」
女子生徒はピシャリと言い放つと、再びパソコンに目を向ける。
確かに、もう部屋から出ても、西ヶ崎さんはいないだろう。
しかし、私は彼女のさっきの言葉が妙に胸につかえていた。
“不登校”。
重たい響きのその言葉は、私にとって、全くの無関係では無かったからだ。
私は、彼女の顔色をうかがいながら、小さな声で尋ねる。
「えっ…えっと…その…せめて、名前だけでも教えてくれませんか?」
「…どうして赤の他人に名前を教えなきゃいけないんですか?」
女子生徒の低い声に少し怯みながらも、私は続ける。
「ここで会ったのも何かの縁だろうし…少し話とかしない?」
「結構です。私、話すの苦手なので」
「え、えっと、あ! パソコン! ゲームとかしてるの?」
「あ、餅ネコ始まる時間だ」
女子生徒がふと掛け時計を見上げ、呟く。
私はハッとして掛け時計に目を向ける。
「あと1分…!?」