世界最後の朝を君と
しまった!

心臓がばくんと跳ねる。

すっかり忘れていた。

そう。

私がみな美の誘いを断ってまで家に帰りたかったその理由は、餅ネコのアニメを観る為だったのだ。

毎週水曜日の夕方5時半から放送されている為、いつもなら6限が終わってゆっくり帰宅しても間に合っていた。

しかし、今日だけは違った。

今日は偶然にも、月に3日の7限まである日だったのだ。

そんな事は頭の片隅にも無かった私は録画を忘れ、家を出てきてしまったのである。

更についていない事に、スマホの充電が切れてしまい、親に録画を頼む事も出来なかった。

一気に体中の力が抜け、私はがくんと床に膝をつく。

どれもこれも全て西ヶ崎さんのせいだ。

奴の魔女の様な紅い唇が脳裏をチラつく。

もう今から走って帰っても間に合わないだろう。

週一の楽しみを失ってしまった。

どんな事があろうとも、餅ネコのアニメだけは絶対に見逃さないようにしていたのに。

私はゆっくりと立ち上がり、「帰ります」と蚊の鳴く声でドアノブに手をかける。

「ちょっと」

女子生徒の声で私は振り返る。

「餅ネコ、観たいんでしょ? そこのTV使ってどうぞ」

女子生徒の指差す先には、何年か前のモデルであろう、古びたTVが置いてあった。

「ありがとうございますっ!!!」

私は勢い良く扉を閉め、TVの前にスライディングして座り込む。

「リモコンどこですか!?」
「そこです」

私はソファに置いてあったリモコンを、競技かるたの様に素早く手に取る。
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