『遠距離』恋愛。

妊婦さんの診察が終わり助産師さんと話していると、小宮先生に呼ばれた。
「相川さん、ちょっと。」
「はい、、」

仮眠室に呼び込まれた。
「なんで仮眠室、、？」
「だれもいないから。」
「どうかしました？」
「お前がどうかしてたんだよ。」
「え？」
「相川先生、妊娠高血圧症候群です。」
そういって検査結果の紙を見せてきた。
「うそ、、、」
「どうするかは、相川先生の判断にお任せします。できれば早いうちに決めてください。」
「はい、、」
妊娠高血圧症候群。母体への負担も大きくて、辛そうな妊婦さんもたくさん見てきた。
その日一日中考えて、出した結論。

「小宮先生！」
帝王切開の手術から帰ってきた小宮先生を呼び止める。
「どうしました？相川先生。」
「私、、産みます。」
「、、ほんとに⁉︎」
「はい。小宮先生が言われた通り、堕ろせないなって、、、いや、堕ろしたくないなって思いました。」
「わかった。じゃあもう入院してもらう。」
「え！？」
「お前は産科医だから知ってるだろ？？早剥とか早産、死産とか。下手したらお前が脳出血で死ぬ場合もある。」
「はい、、」
「とりあえず今の目標は24週だな。」
「はい。」
「それで、お前の担当医だけど、、」
「、、小宮先生、、お願いできませんか、？」
「、え、俺は良いんだけど、、。相川先生、俺は男ですよ？大丈夫なんですか？」
「小宮先生なら、信頼できる、、というか、、、」
「そっか、わかった。嬉しいよ。ありがとう。今日はひとまず家に帰りな。」
「いや、私今日当直なので！」
「だめ。お前は産科医である前にもう1人の妊婦だ。当直は俺が変わる。」
「、すみません、、。ありがとうございます。」
「入院に必要な道具とか、持っておいで。」
「はい！」
私は走って家へ戻ろうとした。すると、
「相川ーっ！走るな！お前は妊婦だ！！」
笑いながら小宮先生が注意をしてきた。
「はーい！」
久しぶりに男の人と笑った気がした。
なんだか、小宮先生だけは特別な気がする。