『遠距離』恋愛。

ついに迎えた24週。
たくさん診察してもらっているうちに、小宮先生との接触は、少しずつ慣れてきた。
「相川先生ー。入りますよー」
「どうぞー」
「おはようございます。」
「おはようございます。」
「24週ですね、」
「はい、、、。」
「体調悪いとかありませんか？」
「大丈夫です。」
「帝王切開ですが、来週、再来週あたりでどうでしょう。」
「お任せします。」
「わかりました。じゃあ、死刑宣告みたいに当日の朝に伝えにきます。」
「えーなんか怖い、、。」
「あはは。まあ楽しみに待っててください。」
「はい。」

その日の夕方。
私は痙攣を起こして倒れた。
「相川先生、しっかりしてください!相川先生！」
小宮先生の声が聞こえる。
「これ以上妊娠を長引かせられません！今から帝王切開します！いいですね？」
返事ができない。
「相川先生のご両親に連絡とって。」
小宮先生が周りの助産師さんたちに的確に指示を出している。
「NICUにも連絡して！」
「はい！」
なんだかすごく緊迫している。
痙攣がおさまり、腰椎麻酔での帝王切開が始まった。
小宮先生と目が合う。
今になって不安になり、涙が出てきた。
「相川先生、大丈夫。」
「はい、、」
「始めていいですか？」
「お願いします。」
「帝王切開術始めます、お願いします。メス、」
始まった。
「相川先生。」
「はい、」
「俺が、怖いですか？」
あの日にされた質問。もう今は全然怖くない。
「いいえ、怖くないです。むしろ、、」
「むしろ、、？」
「心から信頼してます。」
「相川先生、、、」
「なんか、お腹が変な感じ、、、」
「相川先生、赤ちゃん出ますよ。お腹押します、少し気持ち悪いかもしれないけど我慢してください。」
「はい、」
ついに、生まれる。
「おめでとうございます！」
「ふうぅ。」
しかし。
泣かない。
うそ、泣いて。
お願いだから。
NICUの人たちが必死に酸素を送っている。
泣いて、泣いて、、、！！