『遠距離』恋愛。

小宮先生の手を思いっきり払いのけてしまった。
絶対に信頼を欠いている。
でももう、男の人が怖くて、怖くて。
できれば接触したくない。あの日を鮮明に思い出してしまう。

今日は私が担当する初めての妊婦さんが来る日だ。こんなことしてられない。私は白衣を翻して職場に戻った。



「おめでとうございます、妊娠6週目です。」
パァっと妊婦さんの顔がほころぶ。エコーの写真を渡すと、彼女は大事そうに自分の財布の中にしまっていた。
「旦那に、連絡します！よかったぁ。」
「じゃあ、また来週きてくださいね。おめでとうございます。」
「ありがとうございました！」
嬉しそうに部屋を出て行く彼女の背中を見ながら、私も嬉しくなる。

しかし私はその時、まだ気付いていなかった。