【短】私が「好き」だと言っても貴方はただ、曖昧に笑うだけなのでしょう?
「もう…いい加減離してよ…」
「お前ね、それはなくないか?」
「なに?甘いピロートークでもしてくれるわけ?」
そう冷たく言い放って、ベッドの下に散らばったキャミソール達を手に取った。
ーー今ここで、この手を取って引き寄せてくれたら…ーー
そんな願いは当然の事、彼には届かない。
私は少し色が落ちてしまったブラウンの髪をさらりと掻き上げると…これみよがしに溜息を吐いた。
「ね、そろそろ帰った方がいいんじゃないの?」
「んー…そうだな。そろそろ帰るわ。じゃあ、また」
また、なんてなくていい。
また、が絶対にあって欲しい。
気持ちは何時もせめぎ合う。
私はすっかり冴えきった頭で、身支度を済ませると、サイドテーブルに今夜の部屋代をぱさりと置いた。
「それくらい俺に…」
「駄目よ。それがお互いのルールでしょ?」
「志乃…」
「さ。私はもう行くわ…じゃあね」
そう告げると、お気に入りのピンヒールを履き部屋を出る。