【短】私が「好き」だと言っても貴方はただ、曖昧に笑うだけなのでしょう?
「池上さん!元気ないじゃーん?どーしたの?」
そう、ニコニコと声を掛けてくるのは同期の西島くん。
「んー…?まぁ………何でもないわよ?」
「そう?そんな感じしないけど?」
思わず隠している本音を吐露してしまいそうで、ハッとした。
にっこりと微笑んで切り返すのに、西島くんはひるまない。
それどころか、まだ私から何かを引き出そうとしてくる。
「強いて言えば…あの日だからかも。西島くん、私今結構カリカリしてるから、傍にいない方が賢明かもよ?」
何時もなら、流せる同期との会話もなんとなく面倒臭くなって、そう告げてからファイルを持って上司の元へと席を立った。
あぁ…何時もとは違う真紅のリップなんて塗ってくるんじゃなかった。
気分転換にしようとしたのに、そういうことに敏い人達からやたらと声を掛けられて苛々する…。