君の変わらぬ明日のために
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1年前
「有璃紗、調子はどうだ?大丈夫か?」
「うん、大丈夫。毎日元気に動いてるよ。蹴られたら痛いけどね」
そういって彼女は、少し膨らんだお腹に手を当て、優しく撫でた。
そう、有璃紗のお腹の中には別の命が宿っていた。
俺と有璃紗にとって初めての子供だ。
この頃、戦争は次第に激しい戦いになってきており、20代の若者でも簡単に戦地へ送られた。
「それより…赤紙、来てないよね?大丈夫だよね?」
「大丈夫だよ。来てないし、来ないから」
いつ自分に赤紙が届いてもおかしくはない。
ただ、心のどこかで『自分には来ないだろう』という気持ちがあった。
そのうち産まれてくる子供のため、俺は必死に仕事場で働いた。
俺の仕事は、とある研究だ。
今の時代、ほとんど役に立たないかもしれないが、新たな発見をすると、遠回しではあるがこの戦争を終わらせる方法が見つかるかもしれない。
裕福な暮らしはできなかったが、俺は研究に没頭した。