【短編】メロンソーダに溺れる
『朱莉(あかり)ちゃん、今年は受験生ね』
どこに行っても必ず大人たちに言われるそのセリフ、もう聞き飽きた。
《おーい、あかり〜サボりか〜?》
親友、っていうほどでもないけれど、中2の頃から同じクラスで、塾も同じのハル坊こと岩崎遥(いわさき はるか)からのメッセージを、もう、3分ほど未読無視している状態だ。
ここは、塾近くのファーストフード店。
なんとなく、今日は塾に行きたくなくて、塾のある建物を過ぎて、ハンバーガー店の窓側の席でスマホをいじってる。
受験生のストレス、舐めないでもらいたい。
といっても、周りの子と比べてすこぶる勉強しているわけではないんだけれど。最近は特に。
やったってどうせ結果が思うようについてこない。
『受験生』
そんなレッテルに嫌気がさしているのだ。
注文したポテトをひとつ、口に放り投げてから、
あ、ケチャップもらうの忘れた、なんてまたイライラして。
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