KYOKO
*               会社 会議室
  ホワイトボードに新作ソフトの開発状況が記されている。
  哲郎をはじめプロジェクトメンバー、専務、営業、広報等が出席している。
哲郎「ただいま試作の段階で実際にテストを行い、
データを収集している状況ですが、
今回のメインセールスとも言える主人公キャラの成長システムについて 
橋本からご説明させていただきます。」
橋本「ええ、今回のシステムの画期的なところは、なんといっても自分好みの   
主人公像を作りあげられる点にあります。
成長していく過程でルックス、性格、知能指数もプレイヤー側の手に
委ねられていると言えるわけですから、、、」
営業「それは、例えば、好きなアイドルの顔を持ったキャラに”東大生の頭脳”といった
類いのものを想像していいのかな?」
橋本「その程度のことなら従来の既存ソフトにもありましたよね。
   これは、もっと緻密で繊細、、、
   いわばディスクという人工社会で子供を育てていくことそのものなんですよ。
あらかじめ赤ちゃんのスタイル、家庭環境、通わせる学校のデータ等を
組み込んで勉強させたりして人工知能を、つまり、
主人公をリアルに教育していくことができるわけです。
ただし、時間経過に関しては、その都度コンピュータが判断して   
ユーザーが飽きないようにプログラムしてあります、、、」
専務「例えば、それは自分と同じ成長過程のデータを入力していくと
全く同じ自分というか、分身がゲーム内に登場するということなのかね?」
橋本「その通りです。考え方はもとより、
   専務御自身の赤ちゃんの写真そして御両親の写真を入力しておけば、
   ルックスもおそらく、専務の成長軌跡を辿るはずです。
   ただ、それだけのデータを入力するには、それこそ不眠不休の作業に
なると思いますが、、、しかし、まさにそれこそが、
ヘビーユーザー、ライトユーザーも含めて、
話題性、娯楽性、全てにおいて納得しうるソフトだと確信しております。」
  西山、哲郎の表情をうかがう。
  目を閉じている哲郎。
広報「ま、そういう意味では、かなりマニアックなユーザーも取り込めると
   言うわけだよね。」
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