カップいっぱいの幸せ
「ゆっくり用意しておいで。」

車を止めて、声をかけると

「………………………………一緒に………上がって………。」と

何とも可愛いらしい誘いを受けた。

普段は決して見せることのない、ワガママ。

余程さっきの脅しが効いたようだ。

クスリと笑うと、悔しそうな顔を見せるが

それでも『来なくて良い。』と言わないところをみると

さすがに不安なようだ。

「お邪魔します。」

先日聞いた『部屋が片付かない』意味は

一歩足を踏み入れると直ぐに分かった。

決して汚い訳ではない。

ただ、所狭しとぬいぐるみが置いてある。

「これはまたスゴいね!
幼稚園の先生って、こんなに使うんだ。」

単純に驚く俺に

「ううん。
それはプライベート。
幼稚園で使うのは、このアンパンマンシリーズの指人形だけ。」

アンパンマンの指人形は、手のひらサイズが10体あるだけ。

…………ということは、残り全てがプライベート??

「相当好きなんだね。
どれを持って行く?」

さりげなく聞いてみたが

本心をいうと、この数だけ彼女の闇を見たような気がして

彼女の心が気になった。
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