カップいっぱいの幸せ
「これでヨシ!
マスター、お待たせしました。」

ボストンバック二つ分の荷物。

年頃の女の子にしては、かなり少ないけど

この部屋の様子を見ると…………こんな物かもしれないな。

元々、洋服や道具を持ってないみたいだから。

まぁ、社会人一年目ならそんなもんかなぁ。

「忘れ物があったら、遠慮しないで言って。
いつでも取りに帰れるから。
じゃあ、しっかり戸締まりをして。」

一応戸締まりを勧めたけど………

女の子が住む所ではないよな。

俺のマンションのようにとは、もちろん言わないけど……

それにしても酷すぎる。

今回、強く同居を勧めたのも

送って来る度気になってた、マンションという名のアパート。

外観を見るだけでも心配していたけど……

さっき入ってびっくりした。

隣のベランダと筒抜けだ。

壁も薄く、隣や上の生活音どころか

アパート全体の音が聞こえるようだ。

おまけに、独身寮のように男の一人住まいが殆どだ。

よく今まで何事もなく過ごしていたと関心する。

『ここに帰らせることはないな。』

心の中で呟いて、部屋を後にした。
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