クールな御曹司と愛され新妻契約
何を話しているかなんてここでは聞こえるわけもないのだが、なんとなく黄色い声が飛び交っているように思える。

……やっぱり、千景さんって既婚者になっても女性から囲まれたりするんだ。

副社長はそんな女性たちを無下にすることもなく、笑顔で対応している。
それの様子に、なんだか少しだけモヤモヤしてしまう。

ここは冷泉ビバレッジのパーティーなのだから、彼が招待客をもてなすのは当たり前のはずなのに、急に手の届かない遠い存在のように思えてきてしまい、ちょっと複雑な気持ちを抱く。


そんな様子を見ていると、お皿に可愛く盛り付けたケーキをフォークで食べていた女の子二人組が、

「副社長が結婚したって聞いて、ホントにショックー。このパーティーも前から楽しみにしてたのに」

「わかる〜。パーティーならここぞとばかりにアピールできたのに、とうとう既婚かぁ。最近は社食にも全然降りて来てくれないから、千景様の癒しが足りなくてつらぁい」

なんて言いながら、私と同じく着飾った女子達の輪の中心にいる千景さんを見ていた。

どうやら二人は冷泉ビバレッジの女子社員らしい。
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