クールな御曹司と愛され新妻契約
私は明るく言い繕って、膝の上で指先をきゅっと握りしめる。


両親が、女子大を受験するのを応援してくれた理由は、管理栄養士になりたいという私の夢を応援してくれていたわけではなく、卒業後に早く結婚して女の幸せを掴んでほしかったからだと聞いた。

結婚してから十二年目でやっと第一子の私が産まれた両親は、どうしても自分たちが結婚した年齢よりも早く、私に嫁に行ってもらいたいらしい。

就職してから今までも強制的にお見合いへ連れ出されたり、勝手に婚活パーティーに申し込みをされていたことはあったけれど、仕事を続けたいと言えば相手側から断ってもらえたし、そうでなければ自分からお断りする自由があった。

しかし、今回はそう簡単にはいきそうになく、相手が隣人の幼馴染ということもあってか両親も頑なになっている。

両親が勝手に設定したタイムリミットが迫っている今、この降って湧いた機会をどうにかして逃したくないのかもしれない。

両親に大切に愛されて育ったからこそ、二人が私を心配し、幸せになってもらいたいとその機会を押し付けてくる気持ちは……十分、理解している。
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