クールな御曹司と愛され新妻契約
淀みなく告げられた契約内容を、上手く働かない思考回路で必死に噛み砕いてから、私は困惑して眉を下げる。

「で、でも……そんなの、おかしいですよね? そのご提案では、実質私にしか利益がありません」

「いいえ。俺に妻がいれば煩わしい縁談から解放されますし、あなたと同じように仕事にも打ち込める。俺にも十分利益はあります」

彼は軽く首を振ると、優しげに微笑みを浮かべた。

「似た者同士なら、契約結婚という選択も素敵だとは思いませんか?」

「……似た者、同士」

「ええ。俺たちは性別も育った環境も職業も違いますが、本質はきっと良く似ている」

それは仕事のことだけでなく、恋愛のことを含めているのだろう。
彼は新しい女性ハウスキーパーとの恋愛トラブルを避けたいし、私は恋愛においてのトラウマがある。

確かに、契約結婚ならばどちらもこれ以上嫌な思いをせずに便宜上の夫婦を得られて、互いに仕事に生きることもでき、最終的には老後も安心して二人で過ごせるのかもしれない。

それって、つまり一種の幸せの形に……なるんだろうか?
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