クールな御曹司と愛され新妻契約
……ううん、流されちゃダメ。もっとよく考えないと。

そう思うのに、例え冷泉様に一生愛されることがなくても、トラウマの元凶である幼馴染と愛のない結婚をするより、自分が心から恋をしている人と契約結婚をする方がずっといい……と頭の片隅で、思ってしまう自分がいる。

「そ、それでも! 私は、冷泉様の人生をめちゃくちゃにしたくはありませ――きゃっ!」

突然彼の逞しい腕が背中に回されたかと思うと、私は強引に彼の胸板へ抱き寄せられていた。

私は驚きに目見開く。

きゅうっとトキメキが喉に迫り上がるのを感じ、困惑しながら、そっと上目遣いに冷泉様をうかがうと、苦しそうな表情をした彼が私を真っ直ぐに見下ろしていた。


「俺は……あなたになら、めちゃくちゃにされても構わない」


切なげに絞り出された言葉に心臓がぐっと掴まれたように感じて、私は息を呑む。

なんで、冷泉様とこんなことになってるの?
『あなたにならめちゃくちゃにされても構わない』って、どういう意味?

彼の視線に、焦がれて、苦しい。

「……これでもまだ、俺を選んでくれませんか?」

「そ、それは……」
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