クールな御曹司と愛され新妻契約
――『あなたは彼女とは違う。俺は、あなたのことを信頼しています』

脳裏に、冷泉様が初めて私を呼び止めた日のことが蘇る。

それは確か、私以前の女性ハウスキーパーに恋愛感情を持たれてトラブルになったことで、私のことも同じように見て酷く接してしまったという話を、彼が打ち明けてくれた日だった。

いくつかの謝罪とともに、『いつもありがとう。これからも宜しくお願いします』とフラワーアレンジメントのブーケを貰って、とても感動したのを覚えている。

夕飯や朝食を食べずに捨てることや書き置きのメモを読まなかったことなんて、謝罪をしてもらうほどのことではなかったのに、この方はそんな小さなことも気にして悩んでくれていた、とても真摯な方なんだ……とお客様の新たな一面を知って、これからも彼のために頑張ろうと俄然やる気に燃えた。

そうして……気がつけば、そんな真摯な彼の一面に少しずつ惹かれるようになり、密かに恋心を募らせてしまっていたのだ。

だからこそ、冷泉様は私との信頼関係が揺るがないか試すようなことをして、今、明確に釘を刺しているのだろう。
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