クールな御曹司と愛され新妻契約
どこか異国情緒を感じる流暢な日本語で出迎えてくれた、ロマンスグレーの髪と美しい青い瞳の奥様は、ご機嫌な様子で微笑むと、鼻歌を歌いながらワックスで磨き上げられたブラックウォルナットの廊下を進む。

彼女は冷泉様のお祖母様で、私を冷泉様の担当に推薦して下さった方である。

もともとお生まれはイギリスで、有名資産家のお嬢様だった彼女は幼い頃からメイドを雇うお家柄だったそう。
学生時代に英国留学をしていたお祖父様と国際結婚をして、いざ日本に来てみると、メイドがいない生活は想像していたよりも不便で大変苦労をしたとか。

そのため冷泉家は、EmilyMaids創業当時からハウスキーパーを常時二人ひと組で雇っている。
週五日担当しているメインスタッフ達が休日を取る二日間が、私と先輩の出勤日だ。

年度末までは土日担当だったのだが、この春からは平日に移動した。
なんでも、旦那さんが定年退職をしたので、休日を土日に合わせる必要がなくなったそう。

「お邪魔致します」

私達は玄関で挨拶をして、肩にかけていた掃除道具が入ったトートバッグを置き、中からスリッパを取り出す。
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