クールな御曹司と愛され新妻契約
だからこそ、ご家族にはできるだけ早く結婚のことをご報告すべきだよね?
もう今週末には三並家に婚約の挨拶へ行かなければならないし……。

でも、どのタイミングで打ち明けるべきなんだろう……。

先輩と別の場所にいる今、奥様には一足先に冷泉様と結婚させていただくことを打ち明けたかったのだが、冷泉様からの報告がない段階で突然、『結婚させていただくことに決まりました』なんて打ち明けるのは非常識だと思える。

それ以上に、お付き合いの報告も無しに結婚だなんて言い出して、『結婚は許しません。麗さんはハウスキーパー失格です、冷泉家のどちらの担当からも外れてちょうだい』なんて拒絶されてしまう未来を想像して、恐怖で体中の皮膚が総毛立った。

契約結婚ということと恋愛禁止のハウスキーパーという立場からも、自分からご報告するには後ろめたいことがあり過ぎて、ぐるぐると謝罪の言葉ばかりが脳内を占める。

緊張感と罪悪感をどんよりと背負いながら最奥にある書斎に掃除機をかけていた時、不意に背後に気配を感じて振り返ると、冷泉様のお祖母様がにっこり笑顔を浮かべながら、開きっぱなしだったドアの辺りに立っていた。
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