クールな御曹司と愛され新妻契約
掃除機の電源を落とし、私は先ほどまでの気持ちを引きずったまま「い、いかがなさいましたか?」とうろたえつつ首を傾げる。

お祖母様はすすすっとこちらへ寄ると、内緒話をするように手のひらを口元に当てながら、そっと私に耳打ちした。

「おめでとう、麗さん」

「えっ……え!?」

ま、まさか、もう冷泉様から契約……いや、『結婚』のことが伝わっていたのだろうか。

こんな重要なことは自分から礼儀正しく挨拶すべきなのに、素知らぬ顔で仕事を始めてしまったなんて、失礼な婚約者にもほどがある。

ど、どうしよう!

頭の中ではぐるぐると謝罪の言葉が巡り、心臓は極度の緊張で鼓動を早めている。

「奥様、あの、私……本当に申し訳ございませんでした……! ご挨拶もせずに、その……っ」

「大丈夫よ、誰にも言わないって約束ですからね。千景はね、あなたのお陰でああして……会社を背負う副社長として全力を発揮できているのよ。
だからわたくし達は大賛成。ここでは秘密ですから、また別の機会に外でお食事会でも開いて、ゆっくりお話しましょう」
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