クールな御曹司と愛され新妻契約
お祖母様は口元を可愛らしく隠し、まるで英国ドラマに出てくる魔法使いのように、得意げなウインクを披露した。

彼女が去った書斎で、私は掃除機を片手に持ったまま呆然と立ちすくむ。

「あ、あれ……? 怒られなかった……?」

想像していたような解雇宣告もなく、むしろ冷泉家は好意的に結婚を認めてくれている様子だった。

「……良かった……っ」

時間差で押し寄せてきた大きな安心感に安堵しながら、私は力の抜けた体で、膝を抱えてしゃがみこむのだった。




水曜日の午前中は斎藤様のお宅へ向かい、通常の家事と食事の作り置きに加えてお弁当用の御菜作りを行う。

幼稚園に通うご兄弟は食物アレルギーで幼稚園で出される給食が食べられないため、必ずアレルゲンの無い安全なお弁当を用意する必要があった。

ご兄弟が一生懸命にクレヨンで書いてくれた『うららちゃん、いつもありがとう』というメッセージとお弁当の絵は、私の部屋に大事に飾ってある。
それを見るたびに、『頑張るぞ!』と元気をもらうことができた。
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