クールな御曹司と愛され新妻契約
そして午後。私は緊張した面持ちで、いよいよ冷泉様のご自宅のハウスキーピングへ向かう。

四十階のフロアで玄関チャイムを鳴らす。
一応ここで家主の応答が無いかを待つのがマナーである。

もう一度インターホンを押して応答なしを確認すると、私はいつものようにカードキーでロックを解除し、「こんにちは、『EmilyMaids』ハウスキーパーの三並麗です。お邪魔いたします」と玄関で挨拶をしてから、ご自宅へ上がった。


いつものように全室の掃除機掛け、食器洗いなどの水回りの掃除、洗濯、それからワイシャツ等のアイロン掛けをしてから、作り置き用の料理に取り掛かる。

いつもは二日分の食事を作り置きするのだが、今夜の分は一食分減らして作る。
というのも今夜は……いわゆる『初めてのデート』で、冷泉様と一緒に外食することになっているからだ。

そのため、今朝は無意識のうちにメイクする手にいつもより力が入ってしまった。

長い睫毛をビューラーで上げ、マスカラを塗り、アイメイクをバッチリ仕上げたところで――明らかに〝デートが楽しみです〟という雰囲気の自分を鏡で見て、『これじゃあ冷泉様との信頼関係にひびが……っ』と我に返って後悔しても遅い。
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